Blog 昭和レトロ - 号外:未完成で他人物!?
平成21年
【問 31】 宅地建物取引業者Aが自ら売主として、B所有の宅地(以下この問において「甲宅地」という。)を、宅地建物取引業者でない買主Cに売却する場合における次の記述は、宅地建物取引業法の規定によれば、誤っているか。
ウ Aは、甲宅地の売買が宅地建物取引業法第41条第1項に規定する手付金等の保全措置が必要な売買に該当するとき、Cから受け取る手付金について当該保全措置を講じておけば、Cとの間で売買契約を締結することができる。
誤っている
(と思いたい)
今回は、イレギュラーで、昭和以外の問題。本年度の本試験問題です。
この問題は、現時点(10月22日現在)においても見解が分かれており、どちらかというと「正しい」の方が優勢です。いくつかの予備校では「誤り」としていますが、どこも解説などは出していないようです。責任ある立場ですから、おいそれといい加減なことは言えないのでしょう。
ただ、それでは面白くないので、特に責任もない立場として勝手に書いてみたいと思います。
さて、本問につきましては、「宅建業法(第33条の2)の解釈」に関わる話となるでしょう。解釈の仕方によっては、「正しい」「誤り」どちらの解釈もあり得ると思います。
この条文を形式的に適用すれば、本問は二号の要件を満たしていますので、AはCとの売買契約を締結できるということになりそうです。
出題者の意図も「正しい」であったと思われます。というのも、平成9年にこのような問題が出されているからです。→H9-45-4
このときは「41条の2の規定による手付金等の保全措置を講じたときは」となっていたから二号の要件を満たしておらず、AB間の契約がない場合には一号の要件も満たさないから「誤り」だった。でも、これで33条の2の規定を確認してくれるよね?二号は「41条の2」ではなく「41条1項」だというのがわかったでしょ。今度は「41条1項」として出すからヨロシクね(きちんと過去問を勉強している人は正解してくれるだろう)。
こんなかんじだったのではないかと思います。
ただ、ことはそう簡単ではありませんでした。
ほとんどの受験生は、宅建業法の条文そのものではなく、そこに「独自のエッセンス(解釈)」が加えられたテキストで勉強しています。そのようなテキストを作成するのは、おそらく司法試験レベルの学習経験者、すなわち法の趣旨にさかのぼって解釈することを当然としている(リーガルマインドを持った)方々です。テキストにも独自のエッセンスが入ることは避けられません。
この「自己の所有に属しない宅地又は建物」についての33条の2についても同様でした。条文の形式的適用を一歩進め(あるいは無意識に)、たとえ未完成でも「他人所有」であるならば、当然一号の要件をクリアしなければならないと考えるのは普通のことでしょう。テキスト(たとえばパーフェクト宅建)などにもズバリそう書かれているものがありますし、直接は書かれていなくてもそう思っているはずです。
そして、この解釈は確かに33条の2の趣旨に沿っているものだと思います。
宅建業法第33条の2の趣旨は、宅建業者が自ら売主となる売買契約において、「自己(宅建業者)の所有に属しない宅地又は建物」の売買から一般消費者である買主を保護しようというところにあることは疑いがありません。そんな不安定なものを取引する一般消費者を守ろうとしたものだということですね。
ここにいう「自己の所有に属しない」とは、文字通り、売主である宅建業者の所有に属していないということで、「他人所有である場合」と「所有権の帰属が議論できない場合」の2つに分けられます。
一般に、33条の2の一号は他人所有の場合、二号は未完成の場合などとされることが多いようですが、そしてそれは決して間違いとは言えないのですが、最初から二号を「未完成の場合」と考えてしまうと非常にわかりにくくなります。「所有権の帰属」にスポットを当てて考えるようにしてください。それが33条の2を考える上で大切なことです。
まず、「他人所有である場合」、民法では許されている売買契約(他人物売買)の締結が、原則として禁止されます。ただ、「宅建業者が当該物件を取得する契約を締結しているとき」や「宅建業者が当該物件を取得できることが明らかなときで国土交通省令で定めるとき」には、例外として許されることにしました。これが一号の例外であり、当該物件が宅建業者のものになるという法的な拘束がかかりますので、例外として許されるのはわかりやすいでしょう。
次に、「所有権の帰属が議論できない場合」も、禁止にしたいと立法者は思いました。未完成の建物などを想定したものであり、本来これに例外はないでしょう。だって、所有権の帰属が議論できない以上、どうしようもないですから。
ただ、ここで一つネックとなる条文が存在しました。41条です。
同じ自ら売主制限規定の中に、「手付金等(当時は前金と呼んでいました)の保全措置が要求される場合」というものがすでにあったのです(33条の2は、昭和55年改正で追加されたもの)。そこでは、未完成物件の場合について一定の場合には保全措置を講じなければ手付金等を受領できない、となっており(41条1項)、これは、未完成物件の場合にも売買契約締結が可能ということを前提としています。
この規定を無視するわけにはいきません。そこで、二号のような規定を入れざるをえませんでした。「所有権の帰属が議論できない場合」である未完成建物などの場合にも(必要となる保全措置を講じれば)契約可能。こうしないと41条自体の前提を欠くことになりますので、いわば「入れるほかなかった」規定だと言えるでしょう。
この点、自己の所有に属しない宅地建物の売買の原則禁止を謳う33条の2において、例外があるとすれば、本来は「自己(宅建業者)の所有に属しない」という点を解決する方向のものでなければならないはずです。
一号はこれに合致しています。二号はどうでしょうか?保全措置を講じたところで、「所有権の帰属」という点では何の解決にもなっていません。まさに、「入れるほかなかった」から入れた規定にすぎないのです。
ただ、ここで盲点になったのが、「宅地の場合は、未完成でも所有権の帰属がはっきりしていることがある(むしろ普通)」ということです。つまり、41条をそのまま引っ張ってきたような規定の仕方ではいけなかったということで、「所有権の帰属がはっきりしていない場合」などという限定をつけるべきでした。そのような限定がないものですから、「未完成で他人所有の宅地」が一号と二号の両方に該当するような形となり混乱を招いているのです。
本問は、条文を形式的に適用するならば、二号に該当して契約可能とならざるをえません。
しかし、禁止されるはずの契約(他人所有の場合)が、「入れるほかなかった」規定によって息を吹き返す(保全措置あればOK)などという、条文の一人歩きのようなことがあっていいのでしょうか。
私が「未完成で他人所有の宅地」であったなら、相当ビックリしたはずです。
え!?他人所有なんだけど・・・ホントにいいの?ラッキー!
みたいな(笑)
冗談はさておき、「未完成で他人所有の宅地」に関しては、「二号にいう(未完成の)宅地とは、所有権の帰属がはっきりしていない場合の話である」というような限定解釈をほどこすことで、「他人所有」であればそもそも二号の話ではない、一号をクリアする必要がある、という解釈をすべきものと思います。
ただ、このような解釈を有効とするためには、判例や通達(今は通達とは呼びませんが)によってお墨付きを与えられなければなりません。本件に関する判例や通達などがない以上、いくら上記の解釈を声高に主張してみても・・・というのが悲しいかな実情です。
諸悪の根源は条文の規定の仕方にあるのでしょう。単に稚拙であったのか(まとめて規定することでわかりにくくなるのは法律のお家芸です)、政策的な意図が含まれていたのかはわかりません。
指定試験機関の公式解答を指をくわえて待つしかないわけですが、いずれにしても、解釈の固まっていないような問題を出したのは迂闊でした。
「誤り」とした場合、指定試験機関の解釈が判例や通達と(少なくとも宅建試験において)同じような効力を持つというのも変な話ですし、かといって、「不動産取引に関する紛争の未然防止を図るとともに、適正かつ迅速な処理を推進して、消費者の保護と宅地建物取引業の健全な発展に寄与することに努めて」いる団体が、条文の形式的適用に甘んじて「正しい」と断言してよいのかどうか。苦渋の決断を迫られるところでしょう。個人的には「正しい」「誤り」とも両方正解にするほかないと思います。
しかし、絶対に出ないと思っていた論点だったので、ビックリしましたね。「あー出しちゃったよ」みたいな・・・
今回は、試験制度に変更があったということもあってか、他の問題文の文章にも「バタバタ感」が感じられました。
受験生としては、このような問題にかかわらず、確実なところをきっちり取って合格できる力をつけておかなければなりませんね。
【問 31】 宅地建物取引業者Aが自ら売主として、B所有の宅地(以下この問において「甲宅地」という。)を、宅地建物取引業者でない買主Cに売却する場合における次の記述は、宅地建物取引業法の規定によれば、誤っているか。
ウ Aは、甲宅地の売買が宅地建物取引業法第41条第1項に規定する手付金等の保全措置が必要な売買に該当するとき、Cから受け取る手付金について当該保全措置を講じておけば、Cとの間で売買契約を締結することができる。
誤っている
(と思いたい)後日談→2009/12/2の合格発表に伴い、正解は「誤っていない(正しい)
」と発表されました。
今回は、イレギュラーで、昭和以外の問題。本年度の本試験問題です。
この問題は、現時点(10月22日現在)においても見解が分かれており、どちらかというと「正しい」の方が優勢です。いくつかの予備校では「誤り」としていますが、どこも解説などは出していないようです。責任ある立場ですから、おいそれといい加減なことは言えないのでしょう。
ただ、それでは面白くないので、特に責任もない立場として勝手に書いてみたいと思います。
さて、本問につきましては、「宅建業法(第33条の2)の解釈」に関わる話となるでしょう。解釈の仕方によっては、「正しい」「誤り」どちらの解釈もあり得ると思います。
宅建業法の条文
第三十三条の二 宅地建物取引業者は、自己の所有に属しない宅地又は建物について、自ら売主となる売買契約(予約を含む。)を締結してはならない。ただし、次の各号のいずれかに該当する場合は、この限りでない。
一 宅地建物取引業者が当該宅地又は建物を取得する契約(予約を含み、その効力の発生が条件に係るものを除く。)を締結しているときその他宅地建物取引業者が当該宅地又は建物を取得できることが明らかな場合で国土交通省令・内閣府令で定めるとき。
二 当該宅地又は建物の売買が第四十一条第一項に規定する売買に該当する場合で当該売買に関して同項第一号又は第二号に掲げる措置が講じられているとき。
この条文を形式的に適用すれば、本問は二号の要件を満たしていますので、AはCとの売買契約を締結できるということになりそうです。
出題者の意図も「正しい」であったと思われます。というのも、平成9年にこのような問題が出されているからです。→H9-45-4
このときは「41条の2の規定による手付金等の保全措置を講じたときは」となっていたから二号の要件を満たしておらず、AB間の契約がない場合には一号の要件も満たさないから「誤り」だった。でも、これで33条の2の規定を確認してくれるよね?二号は「41条の2」ではなく「41条1項」だというのがわかったでしょ。今度は「41条1項」として出すからヨロシクね(きちんと過去問を勉強している人は正解してくれるだろう)。
こんなかんじだったのではないかと思います。
ただ、ことはそう簡単ではありませんでした。
ほとんどの受験生は、宅建業法の条文そのものではなく、そこに「独自のエッセンス(解釈)」が加えられたテキストで勉強しています。そのようなテキストを作成するのは、おそらく司法試験レベルの学習経験者、すなわち法の趣旨にさかのぼって解釈することを当然としている(リーガルマインドを持った)方々です。テキストにも独自のエッセンスが入ることは避けられません。
この「自己の所有に属しない宅地又は建物」についての33条の2についても同様でした。条文の形式的適用を一歩進め(あるいは無意識に)、たとえ未完成でも「他人所有」であるならば、当然一号の要件をクリアしなければならないと考えるのは普通のことでしょう。テキスト(たとえばパーフェクト宅建)などにもズバリそう書かれているものがありますし、直接は書かれていなくてもそう思っているはずです。
そして、この解釈は確かに33条の2の趣旨に沿っているものだと思います。
宅建業法第33条の2の趣旨は、宅建業者が自ら売主となる売買契約において、「自己(宅建業者)の所有に属しない宅地又は建物」の売買から一般消費者である買主を保護しようというところにあることは疑いがありません。そんな不安定なものを取引する一般消費者を守ろうとしたものだということですね。
ここにいう「自己の所有に属しない」とは、文字通り、売主である宅建業者の所有に属していないということで、「他人所有である場合」と「所有権の帰属が議論できない場合」の2つに分けられます。
一般に、33条の2の一号は他人所有の場合、二号は未完成の場合などとされることが多いようですが、そしてそれは決して間違いとは言えないのですが、最初から二号を「未完成の場合」と考えてしまうと非常にわかりにくくなります。「所有権の帰属」にスポットを当てて考えるようにしてください。それが33条の2を考える上で大切なことです。
まず、「他人所有である場合」、民法では許されている売買契約(他人物売買)の締結が、原則として禁止されます。ただ、「宅建業者が当該物件を取得する契約を締結しているとき」や「宅建業者が当該物件を取得できることが明らかなときで国土交通省令で定めるとき」には、例外として許されることにしました。これが一号の例外であり、当該物件が宅建業者のものになるという法的な拘束がかかりますので、例外として許されるのはわかりやすいでしょう。
次に、「所有権の帰属が議論できない場合」も、禁止にしたいと立法者は思いました。未完成の建物などを想定したものであり、本来これに例外はないでしょう。だって、所有権の帰属が議論できない以上、どうしようもないですから。
ただ、ここで一つネックとなる条文が存在しました。41条です。
同じ自ら売主制限規定の中に、「手付金等(当時は前金と呼んでいました)の保全措置が要求される場合」というものがすでにあったのです(33条の2は、昭和55年改正で追加されたもの)。そこでは、未完成物件の場合について一定の場合には保全措置を講じなければ手付金等を受領できない、となっており(41条1項)、これは、未完成物件の場合にも売買契約締結が可能ということを前提としています。
この規定を無視するわけにはいきません。そこで、二号のような規定を入れざるをえませんでした。「所有権の帰属が議論できない場合」である未完成建物などの場合にも(必要となる保全措置を講じれば)契約可能。こうしないと41条自体の前提を欠くことになりますので、いわば「入れるほかなかった」規定だと言えるでしょう。
この点、自己の所有に属しない宅地建物の売買の原則禁止を謳う33条の2において、例外があるとすれば、本来は「自己(宅建業者)の所有に属しない」という点を解決する方向のものでなければならないはずです。
一号はこれに合致しています。二号はどうでしょうか?保全措置を講じたところで、「所有権の帰属」という点では何の解決にもなっていません。まさに、「入れるほかなかった」から入れた規定にすぎないのです。
ただ、ここで盲点になったのが、「宅地の場合は、未完成でも所有権の帰属がはっきりしていることがある(むしろ普通)」ということです。つまり、41条をそのまま引っ張ってきたような規定の仕方ではいけなかったということで、「所有権の帰属がはっきりしていない場合」などという限定をつけるべきでした。そのような限定がないものですから、「未完成で他人所有の宅地」が一号と二号の両方に該当するような形となり混乱を招いているのです。
本問は、条文を形式的に適用するならば、二号に該当して契約可能とならざるをえません。
しかし、禁止されるはずの契約(他人所有の場合)が、「入れるほかなかった」規定によって息を吹き返す(保全措置あればOK)などという、条文の一人歩きのようなことがあっていいのでしょうか。
私が「未完成で他人所有の宅地」であったなら、相当ビックリしたはずです。
え!?他人所有なんだけど・・・ホントにいいの?ラッキー!

みたいな(笑)
冗談はさておき、「未完成で他人所有の宅地」に関しては、「二号にいう(未完成の)宅地とは、所有権の帰属がはっきりしていない場合の話である」というような限定解釈をほどこすことで、「他人所有」であればそもそも二号の話ではない、一号をクリアする必要がある、という解釈をすべきものと思います。
ただ、このような解釈を有効とするためには、判例や通達(今は通達とは呼びませんが)によってお墨付きを与えられなければなりません。本件に関する判例や通達などがない以上、いくら上記の解釈を声高に主張してみても・・・というのが悲しいかな実情です。
諸悪の根源は条文の規定の仕方にあるのでしょう。単に稚拙であったのか(まとめて規定することでわかりにくくなるのは法律のお家芸です)、政策的な意図が含まれていたのかはわかりません。
指定試験機関の公式解答を指をくわえて待つしかないわけですが、いずれにしても、解釈の固まっていないような問題を出したのは迂闊でした。
「誤り」とした場合、指定試験機関の解釈が判例や通達と(少なくとも宅建試験において)同じような効力を持つというのも変な話ですし、かといって、「不動産取引に関する紛争の未然防止を図るとともに、適正かつ迅速な処理を推進して、消費者の保護と宅地建物取引業の健全な発展に寄与することに努めて」いる団体が、条文の形式的適用に甘んじて「正しい」と断言してよいのかどうか。苦渋の決断を迫られるところでしょう。個人的には「正しい」「誤り」とも両方正解にするほかないと思います。
しかし、絶対に出ないと思っていた論点だったので、ビックリしましたね。「あー出しちゃったよ」みたいな・・・
今回は、試験制度に変更があったということもあってか、他の問題文の文章にも「バタバタ感」が感じられました。
受験生としては、このような問題にかかわらず、確実なところをきっちり取って合格できる力をつけておかなければなりませんね。
→2009/12/2の合格発表に伴い、正解は「正しい」と発表されました。


